ありそうでなかった(?) 東プレ軸・MX 軸兼用キーキャップを作ってみました。
作り方ダイジェスト
rsheldiii/KeyV2 を使い
$rounded_cherry_stem_d
を5.7
に設定- stem type を
rounded_cherry
に設定する - stem を長くする
終わり
想定読者
- 規格の違う様々な静電容量式スイッチを使用している方
- 東プレスイッチ用キーキャップを手軽に自作したい方
- 東プレスイッチ、MX スイッチどちらを使う場合でも同じキーキャップを使用したい方
はじめに
東プレスイッチには MX 向けのキーキャップはつかず 1、逆に MX スイッチに東プレスイッチ向けキーキャップはつかないというのが世間の一般的な認識だと思います。 キーキャップを自作しているという方でもどちらか一方に特化したものを作っていると思います。
諸般の事情でステムの長い MX 互換キーキャップが欲しくなり、自分でモデル作っているうちに東プレ軸互換にもできそうな雰囲気を感じたので試しに作ってみました。
ステム形状の方針立て
東プレスイッチのプランジャーを見ると内側2箇所に突起があることがわかります。また最上面よりも若干下にあることもわかります。
キーキャップのステムの方は縦に2本スリットが入ったパイプになっています。ステムが長くキーキャップの傘部分から飛び出してもいます。スイッチ側と引っかかるようなところはないのでプランジャーとの摩擦で固定していることがわかります。
以上を踏まえこんな形のステムを作ったら東プレ、MX スイッチ両方に使えそうです。
スリット幅は MX の十字に合わせると東プレキーキャップの幅より狭くなりますが、見た目的にはいけそうな気がします(実際に計れるとよいのですが精度の良いノギス持っていないので目測で判断してます)。
ステムの直径が一般的な MX キーキャップのステムより大きいので MX スイッチで使うときにハウジングと干渉して押せない可能性がありますが、直径を小さくしたら東プレスイッチに固定できなくなってしまうので押せると信じてこのまま突き進みます。
KeyV2 を使ってモデリング
1から好みのプロファイルのキーキャップを作るのは大変なので、今回は KeyV2 を使って作成していきます。KeyV2 は様々なプロファイルのキーキャップを簡単にモデリングできる大変便利なライブラリです。
git clone -b v2.4.0 https://github.com/rsheldiii/KeyV2
clone してきたら keys.scad
を OpenSCAD で開きモデルを作っていきます。
基本の形を作成
今回は cherry profile なキーキャップを作っていきます。
include <./includes.scad> row = 3; unsupported_stem() rounded_cherry() cherry_row(row) key();
行の数え方は上から 1, 2, 3, 4 と数えるか、下から 1, 2, 3, 4 と数えるかは宗派によって違いますが、KeyV2 は上から数える派です。すなわち数字行が R1 で Z がある行(QWERTY配列の場合)が R4 です。
都合の良いことにステムを rounded cherry にすると十字の縦棒の方にはスリットが入っているのでこのままステムの直径を大きくすれば東プレスイッチに嵌められそうな形状をしています。
デフォルト値の直径 5.5 mm だと東プレスイッチに固定できないので 5.7 まで増やします。直径の値は fernandodeperto /topre_key の値を使いました。
include <./includes.scad> $rounded_cherry_stem_d = 5.7; row = 3; unsupported_stem() rounded_cherry() cherry_row(row) key();
ステム延長
KeyV2 の設定だけではキーキャップの傘の部分(?)よりも下に突き出したステムを作ることは多分できないので、ステムだけ作って基本となるのキーキャップのデータと結合してステムを延長します
include <./includes.scad> $rounded_cherry_stem_d = 5.7; extend_stem_height = 4; // 打鍵面より飛び出さない適当な長さ row = 3; union() { unsupported_stem() rounded_cherry() cherry_row(row) key(); translate([0, 0, -1.35]) rounded_cherry_stem(extend_stem_height); }
以上で東プレ・MX 兼用キーキャップのモデルができました。
STL ファイル形式で出力して、3Dプリンターで印刷します。
openscad -o keycap.stl keys.scad
印刷結果
実際に印刷したものがこちら。ステムが飛び出ていることを除きパット見は普通の MX 用 keycap です。
東プレスイッチ、MX 互換スイッチともにつけてみましたが逆さにしても落ちない程度にはハマりました。ただ、MX の方は若干緩いです。 また、東プレ軸に合わせてステムを長くしているので MX 互換スイッチにつけるとひょろ長くなりますね。普通に使うには向かないと思います。
懸念していた MX スイッチで押せるのか?ということですが、ハウジングに干渉することなく普通に押せました。昨年、遊舎工房のお苦しみ袋かお楽しみ袋に入っていた種類ごちゃまぜスイッチで使えないものはとりあえずなかったです。
おわりに
兼用キーキャップとして使いたい人はほぼいないと思いますが、東プレスイッチ向けのキーキャップを簡単に作れるので、「REALFORCE を分解して40%自作キーボード2台分くらいのスイッチを手に入れたけどキーキャップがなくて困っている」という方は試してみるとよいかもしれません。
または、打つことをそもそも想定していないアルチザンキーキャップを作られている方は、今後このステムサイズで作れば東プレ軸、MX 軸両方いけるようになるので新規顧客を獲得できるかも(?)