静電容量無接点方式キーボード基板をリバーシブルで作ってみた

今回 PCBWay さんの支援で、キーボード用の基板を作っていただきました。Thank you, PCBWay!

今回作った基板は前回作った静電容量式分割キーボードとほぼ同じです。変更点として前回は左右の基板を別々に設計しましたが、今回はリバーシブルで作りました。

goropikari.hatenablog.com

自作メカニカルキーボードだと基板をリバーシブルにしているものを比較的見かけますが(最近は減っている?)静電容量式でリバーシブルを採用しているものは私の知る限り静電容量 Helix だけです。 静電容量式自作キーボードでリバーシブルがあまり採用されない理由は、REALFORCE の検出電極パッドの裏側は GND ベタが抜かれた状態になっているのでそれを模倣するとリバーシブルにそもそも出来ないからというのが主な理由なのかなと推測します。 前回は多数派に倣って基板を作りましたが、私のような販売しないで個人で楽しんでいる場合だとリバーシブルで作ったほうがコスト削減できるので、今回はリバーシブルを試してみました。

基板作成

カニカルキーボードの基板をリバーシブルで作ったときは人力で配線するのは無理だと早々に悟り freerouting に任せましたが、静電容量式だとリバーシブルでも左右別々に作った場合でも配線はほぼ変わらないようにできるため存外簡単でした。

sekigon-gonnoc san の footprint を元に改造しました

こちらが今回実際に使った電極パッドの footprint ですが、両面のパッドを鏡像関係にして、あとはビアを打って両面のパッドを繋げばスイッチ側のリバーシブル対応は完了します。メカニカルだとリバーシブルにするとスイッチ側の配線の数が増えますが、静電容量式の場合はリバーシブルでもそうでなくても配線を全く同じにすることが出来ます。メカニカルと違ってスイッチ側にハンダ付けする箇所が全く無いという静電容量式の特徴が生きた感じですね(LED を配置している場合はその限りではありません)。

発注

今回初めて PCBWay を使いましたが、ページが日本語対応になっているため基板発注が初でもあまり気負いせずに発注できそうと思いました。 基板に関するエンジニアとのやり取りは英語でやるので完全に日本語対応というわけではないようですが入口が日本語というだけでもだいぶ心理的ハードルが下がるように思います。 (2022/12/7 訂正 PCBWay の方によると日本語のカスタマーサービスあるから日本語でも対応していただけるようです) ちなみにアカウントページでの表示言語設定項目はおそらくどこにもないのですが、ドメイン.jp から .com に修正したら英語表示になりました。ちょいちょい日本語が怪しいところがあるのでそういうときは英語にして読むと良いと思います。

発注は「クイックオーダー基板」というのを選ぶと gerber をアップロードするところが現れ、アップロードすると 3D ビューアーで確認できたり、基板サイズのところを自動的に埋めてくれたりといい感じに注文に必要な準備が整いました。私は過去にアップロードする gerber を間違えるという失敗経験があるので正式な発注前にビューアーで確認できるのは便利ですね。

デフォルトのページ

「クイックオーダー基板」を選択したら出るページ

今回は基板の色を黒にし製造番号を消すオプションをつけてあとはデフォルトのままで注文しました。 JLCPCB だとトッププレートのように穴が多いもの注文すると追加料金取られますが、PCBWay ではそのようなことなく注文したときのままの値段でいけました。

途中、エンジニアからの質問に答えつつ、発注から1週間ほどで日本には届きました。ですがそこからの配達途中でトラブルがあって私のもとに届くまでに更に3日掛かりました。輸入はこういうこともあるので時間に余裕をもって発注しましょう。

基板

外観

パット見の仕上がりは特に問題なしです。トッププレートへのスイッチのハマり具合もきつすぎるということもなくちょうどよい穴の大きさに仕上がっていました。

問題点

トッププレートが若干反っていてそこは気になりました。私のキーボードは小さいのでネジ止めで矯正可能な範疇でありますがより横幅のあるキーボードのトッププレートを PCB で作る場合は注意が必要かもしれません。

レジストの色を今回は普通の「黒」を選びましたがこれは失敗だったなと思いました。指紋や基板同士が擦れてできた傷がそこそこ目につきます。 実際には注文していないのであくまで想像になってしまいますが「黒(つや消し)」を選んだほうが指紋などが目立ちにくいのではないかなと思います。ただし、「黒(つや消し)」は基板の製造価格が上がるので無難に「白」あたりを選ぶのが一番幸せかもしれません。

組み立て

前回は NIZ のスイッチを使いましたが今回は BTO のスイッチにしてみました。BTO のスイッチを選んだ場合の欠点としてハウジングサイズが大きいため、スイッチを 19.05 mm ピッチで配置していた場合、スイッチの隙間に M2 スペーサーを入れることが出来ません。 私のようにサンドイッチマウント方式で作成していてスイッチの間に M2 スペーサーを通したい場合はハウジングをヤスリで削る必要があります。

今回 BTO で組んでみて気付いたもう一つの欠点として、BTO のスイッチはトッププレートの穴のサイズに対してかなりシビアだと感じました。下の写真の赤矢印方向に力が加わるとプランジャーの動きが顕著に悪くなります。この部分に爪があることも相まって赤矢印方向に力が掛かりやすくスムーズにプランジャーが動くようになるまでひたすらトッププレートの穴をヤスリで削って拡張する作業を余儀なくされ苦労しました。 緑の矢印方向に力を加えた場合は動きが悪くなることもないので不思議なものです。

打鍵感としては NIZ も BTO もさして変わらない気がするので、組むときの面倒さを考えてしまうと今後は NIZ を選ぶかなぁといったところです。まぁ NIZ は NIZ で遊舎工房から購入した場合は30個単位で買わないといけないので40%前後のキーボードを作る場合は無駄が多く出て困るのですが。。。

そんなこんなでリバーシブル基板版の「小石」が完成しました。

前回のような TRRS ジャックの向きが逆だったというレベルの失敗はありませんでしたが、組み立てていたらちょこちょこ設計ミスに気づきました。最大の失敗としては右の静電容量スキャンモジュールの向きが想定と180度違っていました。リバーシブルで設計するとパーツの向きで頭がこんがらがってしまうのが難しいところですね。

気になる動作の方ですが荒ぶることもなく普通に使えました。リバーシブル基板でも問題ないということを身をもって体験できたので、今後は状況に応じてリバーシブルで作るか否かを選択して作っていきたいと思います。

2022/12/20 追記 軽く触った程度ではあまり感じませんでしたが、ノイズのせいか入力があらぶることが多々起こりました。

2022/12/29 追記 左右で検出される電圧値が全然違うことがわかった。左右の別の閾値を設定したら入力が改善した